十三番目
あ、と声が聞こえ、巳弥は後ろを振り返る。神戌がふるい葉書を眺めていた。
「手ぇ止めないの、掃除」
黙って葉書を見つめている神戌のもとに歩み寄り、葉書を覗き込む。年賀状のようだった。
「姉ちゃんこれ、日付が無いけど」
あら、と呟き、巳弥は神戌から葉書を受け取る。来たのかもね、と神戌を見つめた。
「来たって」
「挨拶」
巳弥はみじかく返事をする。大晦日だけど、と不興げに呟いたが、巳弥が何も言わないので神戌は再びはたきを手に取った。
「……誰かな」
「……さあね」
巳弥はしゃがみ込み、バケツの水に雑巾を浸す。固く絞ると皮膚がかじかみ、まだ生きているんだ、と思った。
影寅は庭で、有卯子は買い出し。すぐに帰ってくるはずだ。神戌は目の届く場所にいる。最後まで残ることを、巳弥は半ば諦めのような重さと共に抱いている。
雑巾で力任せに床を拭く。ぎゅっぎゅっと拭くと気が紛れた。きょうだい達の命の上に生きている、と思った。