妹を見送った。畳に足を投げ出し、縁側の向こうの庭をぼんやり見る。青い空に刷いたような雲が見えた。
 手のひらの中の湯呑みに目を落とす。澄んだ熱い緑を眺め、私はすこし笑う。妹は緑茶が好きだった。私には熱くて飲めないようなのが。

「部屋を片付けなきゃね」
 うん、と私は返事をする。首をのばし、母親のふくらはぎを眺める。あんなに憎んだ妹なのに、いざ居なくなったらどうして憎かったかわからなかった。
 線香の気配がふっと香る。妹だ、と思い、私は目を閉ざす。湯呑みに口を付けて一口すする。舌に触れるお湯はやっぱり熱くて飲めたものじゃなかった。
 あの子の気持ちがわかるみたい、と私は口に出す。母親は返事をしなかった。うっすら白い雲が広がり、私は熱いお湯を再び飲み下した。