サーカス
舞台を照らしていた光が消える。そこにいる、と分かって目を瞑る。一、二、三秒。再び照らされたステージに彼女の姿はなかった。
私はふっと息をもらす。そうなるだろうと思っていたわけではないが、彼女がいないことは自然だと思った。
司会の男が、ちょっと準備が遅れているようですね、と慌てて取りなす。彼のこめかみに汗が浮かんでいるのが見えた。ちらりと窺う彼の目線を受け止め、なくしてしまいました、と返事をした。
裏口のドアに彼女は背をもたせていた。よっ、と手を振る。栗色の髪がふわりと揺れた。
「怒られた?」
「呆れられた」
気分が乗らなかったんだよねー、と笑う。私がじろりと彼女の横顔を見ると、ごめんごめん、と呟く。
「今度さ、もっと高くブランコ乗れる場所探そう」
ん、と私は返事をする。勝手だなあと思うのに、それならいいかに塗り替えられる。静かに暮れていく空を見つめ、私は彼女の手をそっと握った。