魔
重い扉を開けると壁一面に絵があった。天井が高い。薄く差し込む光は天窓があるからなのだと分かった。
「ここにいた画家が描き残したものです」
後ろに付いていた魔術師が口を開く。重々しく迫力のある絵だった。壁から目を離せないまま、今はどうしている、と訊ねる。
「この絵を描いてすぐに亡くなりました」
王のお抱えだったんですがね、と呟く。私は彼を振り返る。伏せられた瞳から感情は読み取れなかった。思わず彼を見つめると、ぱっと顔を上げた。
「あまりご心配なく、私共もおりますし、兵士も付いております」
本日はいかがなさいますか、と彼は重ねる。今日は伯爵に依頼された絵に手を付ける予定だった。部屋に行きたい、とだけ伝えると、彼は頷いて踵を返した。
それは命を狙われた、ということなのだろうか。私は壁を振り返ることができずに足元を見つめる。日が翳り、静かに影と光が同化する。彼が出て行ったあとの扉に手をかける。私はそっと息を吸い込んだ。