卓上旅行


 彼女がジャングルに行きたいのだと言う。暑いし何も楽しいことはなさそうだと思った。口に出すとひどく悲しそうな顔をした。
 ベッドに背をもたせて、投げ出した自分の足を眺めていた。ジャングルで何をしたいの、と私は仕方なくたずねる。洞窟に入ったり草を見たりしたい、と彼女は目を輝かせた。
 洞窟に入ったり草を見たりか。彼女のジャングルへの印象は私と大して変わらないようだった。私はそれを魅力的だとは思わないけど。
「今日はおやすみ、また明日」
 明日になったら気が変わっているだろうと思い、私はそっと髪を梳く。掛布にくるまっていた彼女は不興げに私を見上げた。
「明日になれば忘れるって思ってるんでしょ」
「気が変わってるだろうなと思ってる」
「行く。絶対行く」
 息をもらし、私は目を閉ざす。緑を背景にしてはしゃぐ彼女は愛らしかった。
 ジャングル、私も行く、と小さく呟く。拗ねて聞こえないふりをした彼女の掛布をそっと上げる。おやすみ、と囁き、私も掛布に潜り込んだ。