9月


 手を繋いで帰るのが本当は好きではないこと、お揃いが苦手なこと、私のためにではなく彼女のために、そういうの全部めんどくさいって言えないこと。
「今度さ、靴下見に行こーよ」
 うん、行こ、と私は返事をする。繋いだ左手がわずかに汗ばんでいて、早く家に着かないかな、と思う。目線を下げると鞄に付けたぬいぐるみが目に入る。買いたかったわけじゃないけど、お揃いが仲良しの証のようになっているので買ったし鞄に付けた。彼女は「お揃いだね」と嬉しそうに笑ったけど、本当に嬉しいとは思ってないんだろうなと思った。
「今度は水色が良いな」
 私が言うと、いいね、と彼女は笑う。ふっと右手をほどき、また明日ね、とその手を振った。
「明日遅刻すんなよー」
「しないよ」
 返事をして左手を振る。彼女が角を曲がったのを見て、私も角を曲がる。彼女とふたりで居るのに、こんなにひとりに似ているなんて私は知らなかった。