はじまりの日
村が燃えた日に出会ったのがあの人だった。私と同じようにひとりでたたずんでいて、寄る辺なくあたりを見渡していた。
椅子に座っているあなたを見つめる。手元の本に目を落としながら、かけている眼鏡をそっと上げる。側頭部に白いものが混じり始めている。今日まで生きて、あなたに出会えて、よかった。
私はそっと目を瞑る。次に目を開けること、次に目を開けた時にもあなたがそのままでいることを確信している。窓の外は日が傾き、心地よさそうだった。あなたの低く穏やかな声、頬に触れる手の優しさ、まばたきは息を漏らす時の一瞬。記憶が現実と混ざり合い、私は小さく微笑む。あなたの、本のページを繰る音が響く。