仕事探したらと言われたら出て行く話
カンカンカン、と響く音で目を覚ました。掛布を足でどけ、大きく伸びをして背を丸める。窓の向こうには雲が垂れ込めていた。
「ただいま」
おかえり、と言いながらむっくり起き上がる。玄関で靴を脱いでいる女と目が合う。ヒゲ剃ったら、と息をもらす女をぼんやり見て、腹減ったな、と思う。
「なんか食いたい」
「パンあるよ」
言い、ちゃぶ台の上にビニール袋を置く。ストッキングを脱いでいる後ろ姿を眺めながらウインナーロールを口に運ぶ。飲むもんある、と声をかけようかと思ったが、何か言われたら嫌だと思ってやめた。
「明日、車借りてどっか行くか」
「雨の予報だよ」
ふうん、と返事をする。袋をごみ箱に放り、いつの間にか着替えを済ませた女を見る。緑色のセーターだった。緑が似合う女というものを俺は見たことがない。布団に仰向けになり、ぼんやり天井を見つめた。
女がテレビを点ける音がする。窓の向こうに目線を動かす。重い雲から、静かに雨が降り出す音が聞こえた。