ひとり


 おじいさんと二人で住んでいる。私の話ではない。私の彼の話だ。
 彼と付き合い始めて三ヵ月になる。一人で暮らしているのだとばかり思っていたが、おじいさんと同居しているらしい。屋根裏にいる時もあるしいない時もある、と彼は言った。どっちのお祖父さんなの、と私はたずねたが、彼は不思議そうに首を傾げた。
「ずっと居る、宗助っていう名前」
 ずっとというのは彼が物心ついた時からということらしかった。幽霊か何かなんじゃないかと思ったが、宗助を見たことのない私がそんなことを言うのも変だと思ってやめた。
「いるかもしれないけど、上がってく」
 うん、と私は頷く。他意はないのか、彼もそういう方便を使うということなのか分からなかった。どっちでもいいか、と思いながら玄関を閉めると、屋根裏からわずかに床が軋む音がした。
「今日は居る、下りてこないけど」
 ふうん、と私は頷く。肩すかしを食らった気持ちで部屋を見渡す。ひとり暮らしの男性の家だった。宗助を見たい、と思ったが、私は黙っていた。
「何か飲む」
「何があるの」
 ウーロン茶、と答えながら彼は台所に向かう。静かに閉められた台所の襖を見つめ、屋根裏に耳をすませる。もう音はしなかった。
 彼がウーロン茶のコップを二つ持って台所から出てくる。何か読む、と本棚の漫画をあごで示す。うん、と頷き、私は漫画に手を伸ばした。