あんまりお題に沿えてない
絶望は血と同じ匂いをしている、と私は思う。ベッドサイドに置いてある充電器をしまい込み、掛布から出ている左手をぼんやり見下ろす。ほんの数時間前まで生きていたのが本当だったかどうかなんて、もう思い出せなかった。
あなたの母親が病室に入ってくる。病気じゃないのに病室なんていうのもおかしな話だと思った。折れた肋骨が何本も肺に刺さってしまったとかいう、医者から聞いた話をそのまま伝える。あなたの母親は息が抜けたようなおかしな笑い方をした。
今日はうちにいらっしゃいよと言うので、いいんですかと返事をした。義両親の家に行く気にはなれなかったが断るのも億劫だった。ひどく疲れていて、私の両親に連絡するのも明日にしたかった。
「きれいな夕焼けね」
あなたの母親が窓の外を眺めて呟く。なんと答えていいのかわからず押し黙った。病室のドアが開く音が聞こえ、私はゆっくり振り返った。