難破船


 見渡す限りの青。隣に居る人間の手を握ると、白い息を吐いたのがわかった。生きている、と思い、彼女の方に顔を向けようとする。ずっと動かしていなかったためか、わずかに首が軋む音がした。
「夜中だ」
 彼女は小さく頷いた。残っていたエンジンは火を起こすのに使い、それも昨日使い果たしたところだった。一昨日かもしれないしもっと前だったのかもしれない。僕は目を動かし、他の人間がどこに居るのか確認しようとした。
 外れかけているドアが開き、陸に下りていた人達が入ってくる。両手に鍋を持っていた。口にする気にはならなかったが、何も食べないという選択肢は無かった。僕は半身を起こし、胃にせり上がる何かを飲み込んだ。