たたたた太陽愛されたいよう

眩しいという感情を知ったのは、ごく最近のことだ。
「……なんだよその顔」
隣を歩いている彼が僕を見下ろし、眉間にしわを寄せる。君こそなんだその顔はと言おうとして僕は口をつぐんだ。思い直し、僕はおかしな顔をしていたか、とたずねた。彼は面食らったように黙り込み、正面を向いたまま静かに口を開く。
「自分の表情くらい分かれよな」
僕はふんと笑った。彼はむっとしたようだったが、分かれ道までたどり着くと律儀に立ち止まりひらりと手を振った。
「また明日な」
笑い、彼が背を向ける。明日も明後日もこの毎日が続くことを信じきっている背中に、僕は手を振ることをしなかった。彼の後ろ姿を、街灯のたよりない明かりがしらじらと照らしている。またおかしな表情をしているのが、今度は自分でわかった。

「何を考えているの」
問われ、僕は目を開けた。陰部を生温かく這う舌が止まり、顔を起こすと訝しげなジャイボと目が合った。お前を抱いているあいだに他のことを考えていたと言ったらジャイボは何と言うだろうか。僕は黙っていた。
「余計なこと、考えないようにしてあげる」
再びもたらされた快楽に僕はゆっくり目を閉じる。頭の中が徐々に白みを帯び、他のことを考えられなくなる。愛は存在しない。けれど彼の歩む道が光に溢れていることを、そう思うことと同じ分量で信じている。信じているなどという言葉を使ったことに驚き、僕は上り詰めそこなう。徐々に冷えていく自分の体温を感じながら、自分が人間で、感情を持っているのだという現実に落胆する。

記憶はゆるい靄のように立ち上る。彼らの秘密基地を見つけた日のこと、薄汚れて光の届かない空、彼の屈託のない笑顔。僕ははじめから、世界を手に入れたくて彼らに声をかけたのか? 違う。途切れ途切れの記憶をつなぎ合わせ、僕は答えを探そうとする。ではどうして、基地へ向かう彼らのあとをつけて行ったのだろうか。そこまで思い出し、僕はその先を考えることをやめる。その理由を認めてしまえば、僕を支えている大事な何かが崩れ去るのだとわかっていた。

全身にやけどを負った彼が、僕に何かを伝えようとしている。ひりつくような血の匂いと自分の心臓の立てるおそろしい音。ああ眩しい。僕は痛いほどの喉の渇きを感じながら、彼の名を呼んだ。君に照らされてうごめく闇になるのではなく、本当はずっと、君の隣を歩きたかったのだと、僕は彼に伝えることができなかった。

 


 

ジャイボの存在を頑張って消化したゼラタミ