リーダー、とそのナビ役の少女が叫ぶ声が聞こえた。わたしは得体の知れない床と呼べるのかも怪しいものの上に倒れ込む。彼女の方を見ると、彼女は何のことだかわからないというような顔をしていた。わたしが微笑むと彼女は泣き声を上げわたしに駆け寄る。わたしは必死に治癒術をかける彼女の銃を持った手を見る。こんなにきれいな手がこんなに汚い戦いにさらされているだなんて。ろくなものじゃないと思った。何もかも、ほんとうに。
「信じらんない、あんたほんと」
彼女は涙まじりの声で言った。痛かったし、恐ろしかった。細い指をしたきれいな彼女。透明のマニキュアが塗られている爪と銃。ゼイゼイ言う肺の音を聞きながら、わたしはそんなことばかり思い出していた。
「……ゆかり」
うすく目を開けてわたしは呟く。彼女の姿がはっきりしたりぼやけたりした。彼女は、なに、とわたしの目を見て言った。
「……手、見せて」
彼女は一拍置いて、こんな時に何言ってんのよ、もう、と言う。わたしは目を閉じた。遠のく意識の中、治癒術をかける彼女の声がちいさく聞こえていた。

 


 

発売前に書いたもの