ちゅっちゅする話(百合)

左馬刻がキスをしようとする時にかすかに息をもらすのが好きだった。理鶯をちらりと見上げ、ふっと煙草の香りがしたと思うとくちびるに痛みが走る。彼の愛情表現はやや乱暴だが、それが自分にしか向かないと知っているので、理鶯は誇らしい気持ちになる。口にすれば左馬刻は怒るだろうが、可愛らしい、と思う。

彼がふっと目を伏せたので、理鶯は思わず左馬刻に口付けた。理鶯から彼を求めるのは初めてだった。突き飛ばされることを覚悟していたが、彼は微動だにしなかった。
彼のくちびるは少しかさついていた。口内はやはり煙草の味だった。絡め取った舌が温かかったので、理鶯は嬉しくなって彼に体重をかける。彼の舌が理鶯より一回り小さいことに気付き、思わず後頭部に手を回す。どうしようもなく愛おしかった。
ゆっくり顔を離して左馬刻を見つめる。怒りに震えているようだったので、すまない、と慌てて謝る。顔を伏せた彼の耳が赤く染まっていたので、理鶯は左馬刻に対する温かい感情が溢れるのを感じた。気恥ずかしい気持ちで目を逸らすと、彼は再び理鶯のくちびるに咬みつく。彼が理鶯を独り占めしているように、理鶯もまた彼のこんな姿を独り占めしているのだと思うと、彼の全てを受け容れられる気がした。

 


 

イチャ…イチャ…