リスク取ることをめんどくさいと思う時の話

自信があるように見えて卑屈というのか、妙なところのある男だった。幼い頃から注意深く、気付かないうちに厄介なものを踏むということのない人間だったので、今回だってなんの問題も無いと思った。問一を埋めれば問二の答えが導かれるように、ある程度は予測のできる結果が待っていると銃兎は思っていた。

「こんなの何が面白いのかわかんねぇよ、帰ろうぜ銃兎」
横から顔を出し、呆れたような声を出す。お前が勝手に付いてきたんだろと言う気も失せてしまい、小さく息をつく。もともと神出鬼没だったが、この頃よく連絡が来る。断る理由を考えるのも面倒なので、用事がない時は遊んでやることにしている。しばらく銃兎の目線を追っていたが、飽きたようにふーっと博物館の中に視線をさまよわせた。
「……何を探してるんだよ」
「非常口」
短く返事をした左馬刻の背を見つめる。拗ねた、と銃兎は思った。出口のところにいなかったら帰るか、と思い、ガラスケースの中の絵皿に目線を戻す。
懐かれているのだと思う。奪う仕事をしている割に、頬を緩めた笑顔は年相応だと思う。だから銃兎は深入りしたくなかった。どういう風にすれば一人の少年がこんな風にひねくれるのか、仕事柄よく知っていた。人間の心を取り出して飾っておくような博物館があったらと考え、銃兎はその考えのばからしさにふっと笑う。ガラスケースの前から立ち去り順路を進む。問一が埋まったのに、その先は白紙だった。いったい今までどうやって問二を解いていたのかわからない。ある時なにかが綻ぶと、他の全てが崩れ出す人間なのだ。厄介なものだと判っていながら近寄るほど愚かではないと、もちろん自負してもいた。銃兎は大きくため息をつき、薄暗い順路を進んだ。

 


 

即興二次小説トレーニングから「ひねくれた博物館」 1時間(加筆修正20分) 左銃と銃左のアキレス腱は学歴とか職業とかってより入間さんの頭がいいところだと思う