左馬刻×モブ

阿修羅がいいと思った。けれどその時付き合ってた奴が嫌がったのでやめた。そいつは俺の優しいところが好きなのだと言った。俺はなんだか白けてしまい、何でもいいか、という気持ちになった。そいつのことはそこまで好きなわけではなかったし、ろくでなしの男をかばって埋められて、墓参りに一度行ったきりだ。こんな世界は向いていなかったと、そいつの方が余程優しかったと思う。ほんのわずか温かな、ゴムのような腕に土をかける。こんな時、俺の背中に阿修羅がいると思うことにしている。だから俺は、さっきまで生きていた人間を埋めてもなんにも思わない、なんにも怖くない。
息をつき、スコップを木の幹に立てかける。暑い、と思い、シャツを脱ごうと思ってやめた。白い自分の背中を見てしまったら、今日のような夜を過ごすことはできなくなると解っていた。目を伏せ、小さく息をつく。俺を優しいと言った奴の顔を思い出そうとする。疲れた、と思った。

 


 

即興二次小説トレーニングから「阿修羅錬金術」 30分 (阿修羅錬金術って何???)