恋とはバカであることだ

この頃は酒を飲むと抱かれたくなるらしい。彼のまとう空気がふにゃりと緩んだと思うと、肩のあたりに頬をこすりつけられる。人間の成人男性なのに、なんとなくネコ科の獣を連想させるのは彼の天性のものなのだと思う。
目元の赤らめ方や隙の作り方があまりに自然なので、以前はこういうことをよくしていたのかという問いかけが喉まで出かかったことがある。けれどそれを口に出すのは彼に対してひどく失礼な気がしてやめた。そのうえそれはお互い様だった。
「……左馬刻、飲み過ぎだ」
「……んだよ、堅えこと言うなよ」
体重を預ける彼をそっと窺う。白いシャツから薄い胸板がのぞいていて、何かが煽られる気がした。視線に気付いたのか、彼がかすかに笑みを漏らす。
「……お前結構ムッツリだよな」
「小官も男なのでね」
彼の腰にそっと手を回すと、満足げに息をつく。シャツが皺になっちまう、と甘えた声で囁くので、かなり抱かれたい気分なのだとわかった。
「それは困るな……どうしたらいいだろうか」
「お前そういうのマジ……エロ親父だろそれ」
ふふ、と笑いながら、ほのかに色づいた彼の皮膚を撫でる。彼の全てを許して、今を慈しむということがあまりに安らかで、だから今までもこれからも、ずっと彼に全てを許されたいのだと思った。

 


 

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