相手にプロポーズさせたい同士

窓際の鉢植えが大きくなった。ついこの間までほんの小さな芽だったのに、もう若葉が出ている。左馬刻は少しぼうっとして緑を眺めた。理鶯がいつ水をやっているのかわからないが、しおれたところを見たことがない。生き物の世話をするということに、根本的に向いているのだと思う。
「おはよう、左馬刻」
「おー」
キッチンにいる理鶯の手元を覗き込む。玉子の入ったスープからいい匂いがした。うまそ、と呟いて洗面所に向かう。顔を洗おうとして、シェービングフォームが切れていたことを思い出した。買っとけよと呟いてから、理鶯は使わないんだったと思い直す。それでもきれいに剃っているのだから大したものだと思う。自分の顎をさわり、今日一日くらいは平気だろう、と頷いてリビングに戻る。

椅子に座ると、理鶯が食事を運んでくる。あれ伸びたな、と窓際の鉢植えを見ると、この季節は成長が早い、と頷いた。
マグカップに口をつけ、スープを嚥下する。温かいものがからっぽの胃に流れ込む感覚に左馬刻は未だ慣れない。慣れないが、嫌いではない、と思う。
「……お前さ、何で軍に入ったんだ?」
今までの付き合いの中で、どう見ても争いを好む男だとは思えなかった。たずねると、理鶯は左馬刻の目をじっと見る。生きる目的を見つけたかった、と目を伏せてささやいた。
「軍人は子供でもすぐに一人前として扱ってもらえる仕事だった」
左馬刻は返事をできずに理鶯を見た。じゃあ俺と似たようなもんだなと言おうとしたが、昔の話をするのが面倒だと思ってやめた。
理鶯がそっと立ち上がり、コップの水を窓際の鉢植えに注ぐ。窓辺の光に、透き通るような緑がふるえた気がした。
「喜んでいる」
理鶯は満足げに頷く。椅子に戻り、マグカップを手にした理鶯のわずかに嬉しそうな表情を見つめる。戦場なんかより、ずっと向いている場所があると思った。
「……見つかったのかよ、生きる目的は」
理鶯はじっと左馬刻を見る。ふふ、と意味ありげに微笑み、スープに口をつける。小さく舌打ちをして、左馬刻はフォークに手を伸ばす。焼いた白身魚に突き刺すと、透明な液体がじゅわりと滲んだ。

 


 

ED後捏造(同棲してる) 一汁一菜でよいという提案を読んだ勢いで書いた