はじめての飲酒

部屋に戻ったのは夜も更けた頃だった。真っ暗な部屋で、俺は背負っていた人間を床に横たえる。部屋の灯りをつけようとして離れると、んん、とかすかに声を上げた。
「隊長、ここ背中痛いよ」
俺は灯りをつけそびれる。小さく息をついて、台所へ向かいながら口を開いた。
「飲み過ぎだ」
窓から月明かりが差し込み、だんだんと闇に目が慣れる。水を注ぎ、上半身を起こしたジャスティンに手渡すと、彼は一口だけ飲んでカップを床に置いた。
「抱っこ……」
甘ったれたジャスティンの声に閉口する。正体もなく酔い潰れた若い男に、酒を飲んだことはあるのかとたずねた。案の定けだるげに首を横に振った。
「水を飲め、気分が悪くなったら洗面所に行って吐け」
自室に戻るために立ち上がろうとすると、ジャスティンが俺に向けて両手を伸ばした。根負けした気持ちで抱き止めながら、俺は目を伏せて呟く。
「ジャスティン、おまえは子供じゃないんだ、自分の世話は自分でしろ」
「俺さ、隊長の子供に生まれたかったよ」
湿った彼の声に俺は目を上げる。父親の顔を知らないのだと聞いていた。こんな大きな子供を持った覚えはないと喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。
「……ふん」
背中をとんと叩くと、ジャスティンは静かに寝息を立て始めた。まったく、手のかかる――。腕の中のあたたかな体温を感じながら、俺は小さくため息をついた。

 


 

こういうの私以外誰が楽しいのかなってやつ